冬景色にひっそりと春を告げる「紅梅色(こうばいいろ)」

色のおはなし 2024.02.06配信

”春告草”とは梅のこと。「紅梅色(こうばいいろ)」のおはなし

みなさま、昨日の雪は大事なかったでしょうか。雪に不慣れな関東エリアです。転倒事故も相次いだようなので、引き続き足元にはご注意ください。

 

そして本日もあいにくの曇り空。心までどんよりはよくありませんので、ここはぱーっと明るく、この季節ならではの華やかなお色をご紹介しましょう。

 

その前に、唐突ですがひとつ質問。「梅」の別称として「春告草(はるつげぐさ)」という呼び名があるのをご存知ですか?

 

お恥ずかしながら、私は初めて知りました。春を告げる草、なんと美しい名でしょう。春の花をイメージした色名は多々ありますが、今回はこの季節のトップバッターである「梅」に着目したいと思います。

 

まずは梅の名が入った色名を拾ってみましょう。

 

「紅梅色」「濃紅梅」「中紅梅」「薄紅梅」「莟紅梅」「梅染」「赤梅」「梅重」「一重梅」「白梅色」「梅紫」「梅鼠」「薄梅鼠」「白梅鼠」「栗梅」など、出てくる出てくる……とても多いです。

 

たくさんご紹介したいところですが、本コラムでは欲張らずに一色ずつ。今回は、その中から基本色ともいうべき「紅梅色」のおはなしです。

 

「紅梅色(こうばいいろ)」

先にお示したように、梅の名のつく色が多種多様だからでしょうか。「紅梅色」のカラーコードが何パターンか見受けられました。本コラムでは染色家の吉岡幸雄氏が著作の中で示している色に近いと思われる色を採用しています。

 

冒頭のカラーパレットをご覧ください。心躍るような華やかなピンク色です。同氏の著作「日本の色辞典」にある「紅梅色」の解説はこう始まります。

 

早春のまだ雪が舞う頃に凛と咲く梅の花の、紅色である。

 

薄曇りの空の下、凛と咲く梅の花が目に浮かびます。この「紅梅色」は、平安時代から使われている色名で、王朝文学においても美しい色の代表としてしばしば登場しました。ちなみに、「紅梅色」の薄いものが「薄紅梅(うすこうばい)」。時流れ江戸後期に流行した百鼠の中にあったのが「梅鼠(うめねず)」。こうして少しずつ、梅にまつわる色のバリエーションが増えていったのでしょう。

 

色としてはキレイだけれど、身につけるのはちょっと……という方。そこは臆せずにぜひ! 「紅梅色」をかさねの色目に取り入れた平安貴族のように、春を待ちこがれる色として、心を映す色として、スタイリングに取り入れてみてはいかがでしょう。もしかしたら、新たな扉が開けるかもしれません。

「紅梅色(こうばいいろ)」のルーツは梅のルーツに遡る

いつもの横道コーナーです。あらためて梅の色名を調べていますと、その背景は日本における梅の起源にまで遡ります。

 

梅は奈良時代に中国から輸入され、平安時代に一般化して、貴族たちが梅の花を愛でるようになったそうです。梅の花が詩歌に登場するようになったのは「万葉集」から。当時和歌に詠まれたのは白梅のことで、紅梅を題材として読まれることは稀であったとか。その後平安時代に入って桜の花見が主流になり、あわせて梅見も盛んに行われたということです。

 

と、ここからさらに掘り続けると長い旅路になりますので、今回はひとまず現代に戻ります。

 

気分を変えて、全国の梅の名所を見てみましょう。水戸の偕楽園、京都の北野天満宮、福岡の太宰府天満宮など。まずはじめに誰もが知る名所が思い浮かぶわけですが、よく考えてみれば、梅は私たちにとって身近な花。みなさんの家の近くでも、ちらほらと春を告げるように咲く梅を見かけるのではないでしょうか。

 

梅の起源や色あいの豊かさを知った今、いつもの道すがら、昨日まで気にも留めなかった梅の花から何かを感じるかもしれません。よかったら顔を上げて、梅を眺めてみてくださいね。

 

シンシアカラーズでは、色の世界を辿りながら、そこにつながる興味深いおはなしもあわせて紹介してまいります。最後までお読みくださりありがとうございました。

 

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