春告鳥、ウグイスの羽に似た「鶯色(うぐいすいろ)」

色のおはなし 2024.02.09配信

”春告鳥”とはウグイスのこと。「鶯色(うぐいすいろ)」のおはなし

ホーホケキョのさえずりで春の訪れを知らせるウグイス。このウグイスにはもうひとつの呼び名がありまして、それを「春告鳥(はるつげどり)」と言います。おや……何やら聞いたことがありますね。「紅梅色」のおはなしでご紹介した梅の別称が「春告草(はるつげぐさ)」でした。

 

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春を告げる梅とウグイス。どこかで見覚えのある組み合わせではありませんか?

 

赤い梅の花とその木に止まる明るい黄緑色の鳥。縁のない方には何のことやらかとは思いますが、花札の図柄「梅に鶯」をご存知でしょうか。「梅に鶯」は万葉の時代からの組み合わせで、<とりあわせのよいもの><美しく調和するもの><仲のよい間柄>のたとえです。

 

ここで注意したいのが、花札の図柄に登場する鳥。実はウグイスではなくメジロと言われています。主に虫を食べ、藪などで暮らすウグイスが梅の枝にとまることは少なく、色も明るい黄緑ではありません。花の蜜を好むのはメジロなのです。このポイントを頭にいれて、「鶯色(うぐいすいろ)」を見てみましょう。

 

「鶯色(うぐいすいろ)」

冒頭のカラーパレットをご覧ください。ウグイスの羽に似た渋い黄緑色で、けして明るい黄緑色ではありません。派手な色はご法度とされた江戸時代に誕生し、渋好みの江戸っ子たちに「鶯色」は歓迎されました。この頃は茶色全盛時代でもありますので、もっと古くからあったウグイスの背中の色のような「鶯茶(うぐいすちゃ)」と混同されることもあったようです。兎にも角にも、江戸時代に「鶯色」の着物が大ブームとなりました。

「鶯色(うぐいすいろ)」のうぐいす餅

「鶯色」のお菓子といえばうぐいす餅。飴を包んだ求肥に、青大豆からできた“うぐいすきな粉”をまぶしたシンプルな早春の和菓子です。

 

その由来を調べると、時のころは安土桃山時代にまで遡ります。豊臣秀吉の弟である秀長が、秀吉を茶会に招いた際に和菓子を献上しました。このお菓子は、粒あんをもちで包み、きな粉をまぶしたもの。その美味しさにたいそう喜んだ秀吉が、見た目が鶯に似ていたことから「うぐいす餅」と命名したと言われています。

 

今では、使うきな粉が大豆のものか、青大豆で作った“うぐいすきな粉”かで、各店のうぐいす餅の色が異なるようです。

七十二候「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」

日本には、春夏秋冬の四季だけでなく、二十四の気という季節と、七十二もの候という季節があります。旧暦をもとに暮らしていた時代には、そうした季節の移ろいを感じながら人々は生活していました。

 

七十二候のひとつ「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」。現在の暦で言うとちょうど今頃、2月9日から13日頃がそれにあたります。春の到来を告げるウグイスが美しいさえずりを聞かせてくれる時。かつては梅の咲く季節「梅花乃芳し(うめのはなかんばし)」とも言われていたとか。梅とウグイス。やはり切っても切れない間柄のようです。

 

シンシアカラーズでは、色の世界を辿りながら、そこにつながる興味深いおはなしもあわせて紹介してまいります。最後までお読みくださりありがとうございました。

 

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