春の萌え出る草木の緑「萌黄色(もえぎいろ)」のおはなし

色のおはなし 2024.03.12配信

春の萌え出る草木の緑「萌黄色(もえぎいろ)」のおはなし

本日3月12日はあいにくの雨模様。空にはどんよりとした雲が立ち込めています。こうした日は気分もやや重くなるというもの。本日のコラムでは、気分転換を兼ねて、春の温かい日差しと明るい空に冴え渡る春の色「萌黄色(もえぎいろ)」を取り上げてみたいと思います。

 

「萌黄色(もえぎいろ)」

春になり木々が萌え出す時期の強い黄緑のこと。平安時代から使われた日本古来の色名のひとつで、芽吹いたばかりの草木の葉の色を表します。春先に草の萌え出る黄みの色という意味で「萌黄」、木の葉が芽吹いて萌え出るという意味で「萌木」と書く場合があります。

 

芽生える命の喜びを感じさせる春の色として愛されるとともに、エネルギッシュな若さの象徴として、かつてから若武者の鎧などにも使用されていました。命を育む春と、青春まっさかりの若者たちによく似合う色です。

 

パーソナルカラーのフォーシーズン分類においても、この色は春にあたります。スプリングさんの春ファッションにもぜひ取り入れていただきたいフレッシュなカラーです!

世界で異なる「緑色」のイメージ

日本では、緑色は一般的によいイメージの色です。日本独自の美意識が誕生したといわれる平安時代。宮廷に仕える女房装束は、袿(うちぎ)を何枚か重ねてまとうというもので、その配色を「襲(かさね)の色目」と呼びました。そこには、日本の四季を取り入れた細やかで複雑な配色が生み出されていて、緑の葉の変化を追って、発芽、開花、青葉、落葉など、四季をさまざまな色で表現してまといました。

 

日本人は、自然が生み出す緑色に対して美しさや力を感じており、こうした文化背景が必然的に緑色の印象を良くしてきたといえるでしょう。

 

西洋では、いつでも緑色のイメージが良かったというわけではありません。中世ヨーロッパでの緑色は、“不幸を招く色”とされていました。単一で美しく染められる染料が当時は殆どなかったこともあり、緑色の衣は不安定で変色するうえ、新緑は恋の季節という古代からのイメージが人々の記憶に残り、悲恋や浮気といったことを想起させる色でもあったということです。

 

支配できない自然そのものの脅威と相まって、ヨーロッパでは人を振り回す運命を感じさせる色、アメリカではドル紙幣を印刷する色としてお金を象徴する色とも。加えて、イスラム文化を象徴する色であることも知っておくとよいでしょう。

 

多様性の社会を理解するためにも、緑色は自然を象徴するという共通イメージだけでなく、かつてのヨーロッパ、アメリカ、中東では異なるイメージも存在してきたことを頭の片隅に置いておきましょう。

 

シンシアカラーズでは、色の世界を辿りながら、そこにつながる興味深いおはなしもあわせて紹介しています。今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

 

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